以下に、『ルカによる福音書』20章20〜26節（通称「カイサルへの納税」の箇所）を、原典ギリシャ語（Nestle-Aland版に準拠）で逐節提示し、それぞれに文法的な解説を添えた日本語訳を付します。さらに、語彙や文体の特徴、および解釈上重要な語句の解説を行います。

カエサルと神_ ルカ福音書20章解釈.wav

ルカ20:20

Καὶ παρατηρήσαντες ἀπέστειλαν ἐνκαθέτους ὑποκρινομένους ἑαυτοὺς δικαίους εἶναι, ἵνα ἐπιλάβωνται αὐτοῦ λόγου, ὥστε παραδοῦναι αὐτὸν τῇ ἀρχῇ καὶ τῇ ἐξουσίᾳ τοῦ ἡγεμόνος.

• 文法解釈:

  • παρατηρήσαντες（アオリスト分詞、主語は彼ら＝宗教指導者たち）「注意深く監視したうえで」
  • ἀπέστειλαν（アオリスト動詞）「送り込んだ」
  • ἐνκαθέτους ὑποκρινομένους ἑαυτοὺς δικαίους εἶναι（使役目的構文）「正しい者を装う者たち」
  • ἵνα ἐπιλάβωνται αὐτοῦ λόγου（ἵνα＋接続法で目的、「〜の言葉を誘い出して捕らえるため」）
  • ὥστε παραδοῦναι（結果用法、「それゆえに渡すために」）
  • τῇ ἀρχῇ καὶ τῇ ἐξουσίᾳ（与格、ローマ権力）
  • τοῦ ἡγεμόνος（支配者、総督を指す）

• 日本語訳:

  「そこで彼らは、イエスの言葉尻をとらえ、総督の権威と権力に引き渡すことができるよう、義人を装う刺客たちを監視のうえで送り込んだ。」

ルカ20:21

καὶ ἐπηρώτησαν αὐτὸν λέγοντες, Διδάσκαλε, οἴδαμεν ὅτι ὀρθῶς λέγεις καὶ διδάσκεις, καὶ οὐ λαμβάνεις πρόσωπον, ἀλλ' ἐπ' ἀληθείᾳ τὴν ὁδὸν τοῦ Θεοῦ διδάσκεις·

• 文法解釈:
  • ἐπηρώτησαν＋λέγοντες：「尋ねて言った」（間投詞的）
  • ὀρθῶς（副詞）「正しく」・διδάσκεις（直説法）
  • οὐ λαμβάνεις πρόσωπον（直説法、慣用句的に「顔色を見る」、つまり「えこひいきしない」）
  • ἐπ' ἀληθείᾳ（前置詞句、「真理に基づいて」）+ τὴν ὁδὸν τοῦ Θεοῦ（神の道＝教え）
• 日本語訳: 「彼らはイエスにたずねて言った、『先生、あなたが正しく語り、教えておられ、誰であろうとひいきをせず、本当に神の道を教えておられることを、私たちは知っています。』」

ルカ20:22

ἔξεστιν ἡμῖν Καίσαρι φόρον δοῦναι ἢ οὔ;

• 文法解釈:

  • ἔξεστιν（非人称動詞、「〜することは許されているか」）
  • ἡμῖν（与格、「私たちに」）
  • Καίσαρι（与格、「カエサルに」）
  • φόρον（対格、「人頭税」）
  • δοῦναι（不定詞、「支払うこと」）
  • ἢ οὔ?（「それともいけないのか？」）

• 日本語訳:

  「私たちがカエサルに税金を納めることは許されているのですか、それともいけないのですか？」

ルカ20:23