承知いたしました。

ルカ20:1–8（イエスの権威を問う場面）について、**様式史（Formgeschichte・様式史的方法、Form Criticism）**の視点から解釈します。

◆ 様式史（Formgeschichte）とは

様式史は、聖書テキスト内の単位（「様式」form、独Form）、すなわち物語・言行録・格言・奇跡談などの小単位が、イエスや弟子たちの時代から初代教会でどのような社会的場面（Sitz im Leben）で伝承されたかを分析します。

◆ このテキストの様式的特徴

1. 様式分類

この段落は、主に「論争物語」（ディスプーターツィオーン、争論談 disputation story, controversy story）に分類されます。

論争物語の主な特徴

• 複数の登場人物（敵対者 vs. イエス）
• 質問→反問→結論/回答拒否という定型的対話パターン
• 公の場（神殿や会堂、群衆のいる場所）で展開
• 敵対者の失策・敗北とイエスの卓越を描写

2. 細部の標準的構成と意義

ルカ20:1–8は、様式史でいう「権威論争物語」の典型的な構成をよく保持しています：

1. 状況設定（環境描写）
   • イエスが群衆に教え、宗教指導者がやって来る（“公的状況”）。
2. 敵対的問いかけ
   • 宗教指導者が「どんな権威で？」と問い詰める。
3. イエスの逆問（反問）
   • イエスが「ヨハネの洗礼は天からか人からか？」と問う。