ヨナ書1章4-6節は、神がヨナを追って大嵐を起こし、船の中で眠るヨナを船長が起こす印象的な場面です。この箇所は多くの芸術作品に影響を与えてきました。

文学作品

• *ハーマン・メルヴィルの『白鯨』**では、ヨナの物語が重要なモチーフとして登場します。特に捕鯨船ピークォッド号の船員たちがヨナの説教を聞く場面で、神から逃れようとする人間の普遍的なテーマが探求されています。嵐の中での人間の無力さと神の意志という対比が、小説全体の象徴的な枠組みとなっています。

ジェラール・マンリー・ホプキンスの詩にも、ヨナの嵐の体験への言及があり、神の恵みと人間の抵抗という宗教的テーマを詩的に表現しています。

絵画

ピーテル・ラストマン（レンブラントの師）は17世紀初期に「ヨナと鯨」を描き、嵐の海の迫力ある描写で知られています。暗い雲と荒波の中で翻弄される船の様子が劇的に表現されています。

• *ヤン・ブリューゲル（父）**の作品では、嵐の海洋場面の精密な描写技法を用いて、神の力の圧倒的な存在感を視覚化しています。

音楽

• *ヘンデルのオラトリオ「ヨナ」**では、嵐の場面が合唱と管弦楽によって壮大に表現されています。特に嵐の音楽的描写は、バロック音楽の自然描写技法の傑作とされています。

これらの作品は共通して、人間の小ささと神の絶対的な力、そして運命からの逃避の不可能性というテーマを、それぞれの芸術形式で表現しています。ヨナの眠りは、現実逃避や無意識への退行の象徴として解釈されることが多く、現代でも心理学的な観点から興味深い題材となっています。